エスピリト・サント州、ミナス・ジェライス州、リオ・デ・ジ ャネイロ州とサンパウロ州からなる南東部地方は、総面積 927,286.9km2で、全土の18.85%に値します。人口の42.5%がこ の地域に集中しており、人口密度も国内最大の77.96人/km2で す。89.3%が整備され、都市化が最も進んでいる地域でもありま す。2大主要都市のサンパウロとリオ・デ・ジャネイロはこの地 域に位置します。なお、過去の主要都市であったベロ・オリゾ ンテ市は、国内最大の山地であるミナス・ジェライス州の州都 です。

地形

4つの州が集まるこの地域は、マンチケイラ山脈、マール山脈と エスピニャッソ山脈に囲まれたアトランチコ台地の最も高い場所 に位置しています。主な気候は海岸沿いが大西洋性熱帯、奥地は 熱帯ですが、時期によって霜が降りる場合もあります。ミナス・ ジェライス州にはセハードと呼ばれる背の低い樹木を中心に、州 北部のサン・フランシスコ川沿岸では北東部特有の植物、カーチ ンガ(有刺灌木林)が見られます。南東部の地形は、水力発電所 に適した地形であり多くの場所で利用されています。最大の水力 発電所、ウルブプンガー発電所は、パラナ川沿いのサンパウロ州 とマト・グロッソ・ド・スール州の境に位置しています。南東部 はパラナ川とサン・フランシスコ川の水源地でもあります。
ミナス・ジェライス州との境から海岸沿いに広がるエスピリト・ サント州では、南部の山々から北東部の砂丘やヤシの木へと自然 が変化していく様子が見られます。州都のビトリア市は海岸沿い の島に位置しています。その近くには、モナズ石などの鉱物を含 む砂浜で有名なグアラパリ・ビーチがあります。州の北部のコン セイソン・ダ・バーハ市には、高さ30m近くある砂丘で有名なイ タウナス・ビーチがあります。海岸沿いには植民地時代に開拓さ れた都市が集中しているため、その時代の料理がいまだに人気で す。「モケカ・カピシャバ」や「チンツラ・デ・ウルクン」のル ーツはインディオ料理です。ブラジルで3番目に高い山、バンデ イラ山はミナス・ジェライス州との境にあるカパラオー山脈の一 部です。
サンパウロ州は主に高地に位置していますが、マール山脈と海岸 のわずかなスペースには平地があり、他にもくぼ地もいくつかあ ります。マンチケイラ山脈のペドラ・ダ・ミナは高さ2,797mあ り、州内の最高峰です。州を流れる主な川はチエテ川、パラナパ ネマ川、グランデ川、ツルヴォ川、ペイシェ川、パライバ・ド・ スール川とピラシカバ川です。主な植物は、海岸沿いのマングロ ーブとアトランチカ森林の木々です。気候は海岸沿いが大西洋性 熱帯、奥地は熱帯です。
サンパウロ州と違い、リオ・デ・ジャネイロ州では平野や山、 湖、砂丘と台地など様々な地形がみられます。州都のリオ・デ・ ジャネイロ市はブラジルで最も美しい都市と言われています。市 のランドマークである「ポン・デ・アスーカル」、そして山の 頂上から見守るキリスト像はブラジルの代表的景観でもありま す。最高峰はイタチアイア山脈のアグリャス・ネグラス山は高さ 2,789mです。州を流れる川では、パライバ・ド・スール川、ム カエー川、ムリアエー川、ピライー川、グランデ川があります。 主な植物は、海岸沿いのマングローブとアトランチカ森林の木々 です。気候は海岸沿いが大西洋性熱帯です。

 

経済
南東部は、ブラジルの歴史を振り返ってみても、最も高所得の 地域であります。発展したインフラと鉱工業が集積によりGDPの 58.7%を占めています。また、ミナス・ジェライス州のエスピニ ャッソ山脈をはじめ、鉄鋼石やマンガンの鉱脈が多数発見されて います。リオ・デ・ジャネイロ州沿岸にはカンポス沖油田の開発 がすすめられ、最近ではサンパウロ州沿岸の深海に80億バレル の生産を見込まれるツピー油田が発見されています。この生産量 はOPECの生産量に匹敵するとも言われています。

 

交通
国土の広いブラジルでは、陸路・海路ともにインフラ設備を整え るには各地域の大きな努力を必要とします。その中でも、南東部 の交通手段は最も発展していると言えます。サンパウロ州をはじ め、道路や街道は充実していて、自家用車から大型トラックまで 頻繁に移動を繰り返しています。リオ・デ・ジャネイロ市と二テ ロイ市を結ぶリオ・二テロイ橋はブラジル建設業の発展の象徴で す。海路では、エスピリト・サント州ビトリア市のツバロン港、 サンパウロ州のサントス港は南米最大の港です。地形の条件が不 利であるため、川の交通はあまり盛んではありませんが、サン・ フランシスコ川には航行可能な区間がいくつかあります。空路で は便数も多く乗り換えが便利です。サンパウロ市のブラジルで最 も近代的なクンビカ空港、リオ・デ・ジャネイロ市のトン・ジョ ビン空港、そしてベロ・オリゾンテ市のコンフィンス空港はすべ て南東部に位置しています。サンパウロ市とリオ・デ・ジャネイ ロ市を結ぶシャトル便は世界で最も便数の多い区間です。リオ・ デ・ジャネイロ市はサントス・ドゥモン空港を、サンパウロ市で はコンゴニャス空港を利用します。ベロ・オリゾンテ市のパンプ リャ空港との間にもシャトル便は運航しています。サンパウロ市 は航空機の便数や利用者数、貨物数が世界で最も多い都市のベス ト30に含まれています。また、ヘリコプターや小型飛行機の会社 の数では世界で2番目を誇ります。

 


南東部では農業も盛んです。現在、サンパウロ州では、ガソリン の代替となれるエタノールが生産されるサトウキビの栽培が増大 しつつあります。過去には、19世紀後期から20世紀初頭におけ るコーヒー農園の発展がイタリア、ドイツ、日本からの移民を積 極的に受け入れました。これらの移民者は主にサンパウロ州とエ スピリト・サント州に集中しました。祖国を大切にする移民者た ちがブラジル人とこの地で生活することによって、寛大な、リズ ミカルで、親切で明るい現在の文化が生まれたと言えます。
先進国に匹敵するインフラ設備を持ち、国家の重要決定を左右す る地域として、南東部はブラジル全体の経済を元気づける発信地 とたとえることができます。